haruichibanのおと(日々思ったことなど)

気の向くままに、ウォーゲームや本や映画やテレビ以外のことを、書き残しておこうというブログです。

ラリアット考

プロレスの必殺技の一つにラリアットがある。

スタン・ハンセンが最初に使い始めた技だ。

相手をロープに降り腕を出して相手の首に当てて倒す技だ。

ハンセンはフィニッシュ技に使っていたので一試合に一回出すだけだった。

その後多くの選手が真似するようになった。

最近はラリアットを受ける選手が一回転して受け身をとるので威力があるかのように見える上、見栄えがいいので試合中に多用されている。最初に見たときは回転する側の勇気に驚いた!

だが、ハンセンほどの威力がなく、相手に与えるダメージが小さくなり今では試合の途中に出す見せ技になってしまった。

 

ハンセンのラリアットと最近のラリアットは何が変わったか考えてみた。

 

ラリアットを仕掛けたところを上から見た簡単な図を描いてみた。

最近のラリアットは肘から手首の前腕部分を相手に当てている。

またラリアットを仕掛ける側の腕とと受ける側の頭部が作る角度は直角になっている。f:id:Haruichiban0707:20240123134006j:image

こうなると仕掛ける側の腕には梃子の原理が働き、肘や肩への負担は大きくなる。

上腕の重さと受け側の身体の重さを比較すると、上腕の方が軽いから、まともにぶつかるとか上腕は吹き飛ばされる。実際、ラリアット後後ろに腕を弾かれている選手もいる。

ジャンボ鶴田はよく肘を押さえて痛がっていたが、上腕でラリアットを仕掛ける限り、重さで負けるのは当たり前で肘を壊す危険性がある。

そのためラリアットのパワーが観客に伝わってこない。

 

受ける側は、相手と身体が離れているので、ラリアットが当たった瞬間後方に回転して受け身をとりやすいだろう。

 

派手に一回転するからラリアットに威力があったかのように見える。

だが、腰の辺りで固定されていない人間の身体はいくら強く首を横に殴られても回転することはない。ただ、後ろに真っ直ぐ倒れるだけだ。

派手な一回転は受け手がうまくラリアットのパワーをいなして受け身をとっているのだ。

それは受け身の技術であって、ラリアットの威力ではない。

この受け身の技術はなかなか難しいもので、私は見る度に「すごいなぁ~」と思う。

バク転みたいなものだから私には絶対にできない。バク転できてもあの受け身をする勇気はない。

 

往年のハンセンのラリアットは何が凄かったかハンセンのラリアットするシーンをいろいろ見てみた。

彼は相手と当たっても腕が後方に弾かれることはなかった。むしろ逆に前に振り切っていた。小橋もそうだ。

彼らの腕の鍛え方が他の選手と違うのか?

だが、腕と身体では重さが全く違うから、いくら鍛えても腕で身体に勝てるはずがない。

 

ハンセンのラリアットをよく見てみると、彼のラリアットは肩から肘の間で当たっている。

また身体と相手がなす角度は鋭角だ。ぶつかる時には左肩が前に出ているのだ。

オカダカズチカがレインメーカーを仕掛けるときは右足を大きく前に出して右肩を前にして右腕を当てているので肩と相手の角度は、左右は逆だがこの図のように鋭角になっている。

ただ、オカダの場合右足が前に出過ぎている。ハンセンは前傾姿勢で左足が出過ぎてなくてカッコいい。

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時には身体で当たって、後から腕を振り抜いている。これなどタックルの後腕を振っているようなものだ。
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だから腕が弾かれることはない。逆に振り抜きやすい。だからラリアットに威力があるように見える。

一方で、ラリアットを仕掛けた側と受ける側の距離が近くて身体がぶつかりやすいから、回転する受け身はやりにくいだろう。

 

全てのものごとは変化してゆくものだから、ラリアットという技やその受け身も変化してゆくものだ。

「昔はよかった。今はけしからん!」と言うわけではない。

昔のハンセンや小橋のフィニッシュに使うラリアットの威力は「すご~い!」と思うし、今のラリアットを受けて一回転する受け身も「すげ~」と思う。

 

ラリアットは単純な技だけに、これからも色々なバリエーションでプロレスファンを楽しませてくれると思う。